今年で写真植字が発明されて百年ということで、印刷博物館で企画展が開催されていました。現在はほとんどの印刷物はパソコンのデジタルフォントで制作されていると思いますが、90年代くらいまでの雑誌でも写真植字という方法で文章画面を作っていました。
中世から続くハンコのような活字は木製から鉛で作ったものなどで15-16世紀辺りから様々な文字の書体(フォント)が生まれていますが、日本の活字は新聞社とか活字を作っている会社毎に違うくらいでした。欧米では1920年代くらいから今でも利用されている書体デザインが多数出てきますが、漢字が膨大にある日本語では最低でも2000文字以上ないと文章が作れないという事情があり書体の種類は増やし難い事情があります。
ひとつは常用漢字というものが制定されて、漢字がある程度整理されたこと。写真製版が増えて、小さな活字を彫ることよりも、ある程度の大きさで描いたものをそのまま文字(書体)にできる写真植字を利用するようになります。高度成長期にデザインの重要性も高まり、自由な発想の書体が増えていきます。70年代にコンテストもあり、豊富なフォントが生まれました。


80年代までは英文字でもモンセンなどの欧文書体見本を写真的なコピーをして切り貼りして文字組みしてましたし、写真植字も文字の間隔はオペレータまかせで、上手いおじさん(職人オペレータ)を探しては細かく希望を伝えて文字組みを作っていました。学生の時に写真植字機を操作させてもらったことがありますが、逆さまの文字と偏や旁で分類された独自の配列から文字を探すは大変で、文字と文字の間を詰めていくのも大変でした。デジタルフォントはカーニングテーブル(文字並びに関する詰め標準データ)が付いていたりしますし、四角い文字も多い。イラレなどのアプリでは画面を見ながらキーボード操作で詰めるのも簡単ですから、今のデザイナーさんにはその頃の大変さや工夫の数々は想像し難いかもしれませんね。
1989年にモリサワがAdobeと最初の日本語デジタルフォントを作りますが、文字数の多さもあって写真植字の書体数を超えるまでには随分時間がかかりました。書体も最初は買い取りでしたが、年間ライセンス式になって、個人制作のフリーフォントも随分増えました。2010年に始まったGoogle fontでネット環境でも豊富な書体が利用できるようになりました。しかしスマホ画面を見ることが多い近頃、看板や印刷物ほどこだわる例も少ない様に思います。写真植字で始まって、デジタル化で裾野を広げた書体(フォントデザイン)は、今後も増えてくれるのでしょうか。






