iPodが音楽の聴き方に与えた影響

ついにiPodとしての最後のモデルiPod touch(アイポッド・タッチ)が、在庫限りで販売終了となることが発表されました。(2022年5月10日)
最初のiPodは、2001年Mac専用のデジタルオーディオプレーヤーとしてiTuneというソフトありきの高額(47,800円)なMP3再生機として登場しました。当時カラフルiMacで一息ついたもののMacのシェアはどん底で、OS Xへの切り替えで再生を図った年でもあります。翌年にはiTuneがWindowsにも対応して、やがてiPodのおかげでMacも売れるといったAppleを牽引するほど影響をもたらし、初めて成功したデジタルガジェットとも言えます。

2001年当時、Rioを始めデジタルオーディオ再生機は既にあって、ソニーWalkmanもMD版やメモリースティック版などがありましたが、iPodの登場が状況を変えました。その時点でのiPodの本質は、大量のコレクション(音源)を持ち歩けること、操作性、転送が早いことです。
当時のMP3プレイヤーはそれほど曲数が入らなくて、小さな液晶で曲は選びにくく操作性も悪く、USBもでたばかりで都度パソコンから曲を移すのに時間もかかるし面倒なので、一般的にはカセットテープかMDで十分という状態でした。
あえてハードディスク搭載を選び、持ってるCDは全部持ち歩ける(曲を聞くたびに入れ替える必要もない)、クルクルっと回せばアーチストや曲も簡単に探せる操作性を実現したiPodは音楽再生機としては画期的だったのです。

やがて、もっとスポーツ用途(ランニング)などで、小型のメモリースティックを用いたiPodが作られ、その時に登場したのがシャッフル再生です。「Enjoy uncertainty」、「Life is random」、偶然性やランダムという広告コピーで、液晶もなく単純な操作性に限定して、限られた音源を混ぜて再生することを提案したのです。
1970年頃からコンセプトやストーリー性を大切にアルバムを重視していたアーティストにとってはショックなことだったかもしれません。「ナップスターは音楽の流通を破壊したが、iPodが破壊をもたらしたのは音楽の聴き方だった」(榎本幹朗)という人がいるくらい、その後に与えた影響は大きなものです。

今では、かつてのレコードコレクションは必要なく、定額制で大量の音源も持ち歩くことなく楽しめますし、友達から曲をセレクトしたカセットテープをもらっていたのが、プレイリスト共有にかわり、新しいアーティストに出会うのも、ラジオや雑誌ではなくYoutubeやSpotify、その他のSNSだったりします。新しい音楽サービスはAIによるリコメンドで、似た傾向の曲をランダム再生してくれます。

いまiPodの役割はスマートフォンに取り込まれ、ネットの音楽サービスに引き継がれました。音楽はメディアで変化していきますから、その辺りも気になるところです。